11.02
Sun
今日は北原白秋氏の命日です。
詳しくは昨年のこちらへ。
http://hoerannee.blog.fc2.com/blog-entry-8.html
今年も白秋祭に行けません……。

それから、いつか犀星と白秋の関係についてまとめて書こうと思って
まだ書けていないんですが、
一足先に、犀星の白秋追悼詩が素晴らしいので紹介させていただきます。

「白秋先生」室生犀星『餘花』昭南書房、1943
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  白秋先生

あなたを単純と見たらいいか
のんびりした人に見たらいいか
あなたは人に親しみ
対手がどこまで蹤いて来ても
それをあまり問題にしてはゐない
どこまで行つても底が見えて来ない
底を見せない
底には行きにくい
或程度までゆくと戸がしまつてゐる
そこにあなたはゐた。

あなたのまはりは
あなたを奉つた人ばかりだつた
あれはいけない
あれはあなたを軽く見せる
あれはいけない
そんなふうに私はあなたを考へてゐた。
あなたは派手でおしやれで
奉られることを露骨に好いてゐた
平気で少々をかしいくらゐ
まはりを畏まらせるところにあなたはゐた
僕や萩原が遠くにゐたのもそんなせゐです
しかしそれすら
あなたをこはすことも
軽くさせることもなかつた
あれでよかつたのだ
先生々々でたくさんだつた
それに間違ひはなく愉快だつたら
それでよかつたのだ
亡くなられたからかういへる
かう云へるやうになつたことは嬉しい。
何でもまはりを賑やかにしてゐて
それで漸とほつとしてゐたところで
あなたは不機嫌になり顔がゆがみ
そして苦々しい思ひをされてゐたのだらう。

あなたは生きられるだけ生きられた
死へ逆ねぢを食はせ
あかんべえをされようとし
五年もうしろ足で死の扉をおさへて居られた
そこに本統のあなたがゐる
奥さんがゐられなかつたら五年の半分
二年くらゐ生きられたであらう
萩原はみとりする妻もなく死に
佐藤はよその家で息を引き取つた
二人の死を悠くり見てからの
あなたの朝夕のねざめはよく分ります
二十七の時にあつてからけふ迄三十年
三十年のあひだにどれだけも打合話もしない
あと十年生きてゐても同じでせう。
そのおなじ話をする間もない三十年といふ奴が
そこだけ廣間になつてのこつてゐるのが
どこをみるよりもさびしく
歩き廻ればずたずたになつて私の半生が
ボロ屑になつて眼に見えて来るのです。
しかしあなたには少しのきづもなく。

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この詩、4話での犀から白さんへの見方、さらには白さんのイメージ形成に
かなり影響を及ぼしています。おわかりいただけるでしょうか。
この詩は『多磨』昭和十八年二月号が初出なんですが、
いわば白秋を「奉つた人ばかり」な雑誌にこの詩を載せたというのもなんとも。
「佐藤はよその家で」というのは詩人の佐藤惣之助で、
七話でミヨシくんが語るある詩人の話。
ある詩人と師匠の妹が結ばれず、師匠の妹が嫁いだ相手が佐藤惣之助に当たります。
昭和17年は朔太郎が5月11日、佐藤惣之助が5月15日、与謝野晶子が5月29日、
白秋が11月2日に亡くなっています。(4月に日本本土への初空襲がありました)

以下は無関係ですが!
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