04.25
Fri
8話はチューヤくんの話でした。

最初に出てくる「四季」の人々は、どれが誰だかご想像いただけると…
といいながら、このブログのどこかにヒントがあったりします。
ようやくたっちゃんも出てきました。

後半の、朔&チューヤの会話について補足してみます。
(特にネタバレにはならないと思います)

朔太郎と中也は『四季』同人同士だったわけですが、お互いへの言及は多くはありません。
どういう記述をどういう風に変換しているかの一例として、少し長くなりますが引用させていただきます。

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「萩原朔太郎評論集ー「無からの抗争」ー」『中原中也全集 第3巻』角川書店

萩原氏の本はよく売れるさうである。ところで萩原氏は文学的苦労人である。氏に会つてゐると何か暖いものが感じられる。
だから氏の本がよく売れることは、私としても喜びである。
氏は実に誠実な人で、いつ迄経つても若々しい。一見突慳貪(つつけんどん)にも見えるけれど、実は寧ろ気が弱い迄に
見解の博い人である。然るに氏のエッセイはとみると、時にダダツ子みたいに感じられる時がある。
蓋し淫酒のせゐである。而してその淫酒は氏の詩人としての孤独のせゐである。
私は何故か萩原氏を思ふたびに、次のポオロの言葉をくちずさみたくなる。
「私は強き時弱く、弱き時強し。」

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「中原中也君の印象」『萩原朔太郎全集 第九巻』筑摩書房

 中原君の詩はよく読んだが、個人としては極めて浅い知合だつた。前後を通じて僅か三回しか逢つて居ない。
それも公会の席のことで、打とけて話したことはなかつた。ただ最後に「四季」の会で逢つた時だけは、いくらか落付いて話をした。
その時中原君は、強度の神経衰弱で弱つてることを告白し、不断に強迫観念で苦しんでることを訴へた。
話を聞くと僕も同じやうな病症なので、大に同情して慰め合つたが、それが中原君の印象に残つたらしく、
最近白水社から出した僕の本の批評に、僕の人物を評して「文学的苦労人」と書いてる。
その意味は、理解が広くて対手の気持ちがよく解る人(苦労人)といふのである。僕のちよつとした言葉が、
そんなに印象に残つたことを考へると、中原君の生活はよほど孤独のものであつたらしい。
大体の文学者といふものは、殆んど皆一種の精神病者であり、その為に絶えず悩んでゐるやうなものであるが、
特に中原君の如き変質傾向の強い人で、同じ仲間の友人がなく、その苦痛を語り合ふ対手が居なかつたとしたら、
生活は耐へがたいものだつたにちがひない。前の同じ文中で、中原君は僕のことを淫酒家と言つてるが、
この言はむしろ中原君自身の方に適合する。つまり彼のアインザアムが、彼をドリンケンに惑溺させ、
酔つて他人に食ひついたり、不平のクダを巻かさせたのだ。この酒癖の悪さには、大分友人たちも参つたらしいが、
彼をさうした孤独の境遇においたことに、周囲の責任がないでもない。つまり中原君の場合は、強迫観念や
被害妄想の苦痛を忘れようとして酒を飲み、却つて一層病症を悪くしたのだ。所でこの種の病気とは、
互にその同じ仲間同士で、苦悩を語り合ふことによつて慰せられるのだ。酒なんか飲んだところで仕方がないのだ。
 中原の最近出したラムボオ訳詩集はよい出来だつた。ラムボオと中原君とは、その純情で虚無的な点や、
我がままで人と交際できない点や、アナアキイで不良少年じみてる点や、特に変質者的な点で相似してゐる。
ただちがふところは、ラムボオが透徹した知性人であつたに反し、中原君がむしろ殉情的な情緒人であつたといふ一事である。
このセンチメントの純潔さが、彼の詩に於ける、最も尊いエスプリだつた。
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他に朔太郎は中也を「懐中に短刀を入れてる子供の図」を感じるなどとも書いています。
上記の中で「僕の本の批評」と示しているのが、上の「萩原朔太郎評論集ー「無からの抗争」ー」に該当します。
中也の実際の文章とは、微妙なズレがあるのが朔太郎らしいです。

ここから、原稿料など三好達治の記述だったり、朔太郎の自分の神経症についての記述、
などを加えて煮込んだものに
月吠漫画としてのテーマ性という香辛料を加えて
(これがひどいにおいだったり味だったりするんですが)ああいう会話になっています。
飛躍の仕方の一例として紹介させていただきました。

そういえば、1巻の参考文献は、読んだ本のうち本編に反映されてると思われるものを挙げさせていただいております。
これで全てということではなく(ブログで紹介してるのに書かれていない本もあったりしますし)、2巻以降随時追加致しますのでご了承ください。

1巻といえば、「まじめな時間」にひきつづき、芥さんに素晴らしい装丁をしていただきました。
カバー下の表紙、レトロな本の感じになっているのは「月に吠える」初版のカバー下デザインのパロディになっています。
中身については、連載時のアフタヌーンをお持ちの方は、単行本と雑誌掲載時との違いを見つけるのは間違い探し状態で面白いかもしれません。
総数はいくつになるのか自分でもわからない量の間違い探しですが…

1巻に関連して、とある没ネームを。
ええ…。
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